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今週はカービングの授業が始まりました。初の試みで何をすればよいのかまったくわかりません。が、やはり木を削って形を作るみたいです。 彫刻にも近いものがあるようですが、一応修復の授業の一環ですので、家具には沢山ある飾り付けを直すという目的です。どのようにラインを見るか、また作るのか聞いた後、最初は粘土で模型を作ります。今回は練習ですので、テキストブックから適当に模様を選んでいます。粘土で立体になおす作業で「高さ」や「前後」を確認します。一通り頭に形がはいったら木に形を写して早速削っていきます。 この時点から僕は何をしてどこを見ればいいのかまったくわかりません。それに専門の講師がきていて既に人見知りが出ています。おまけに初めての専門用語が沢山で意味がわかりません。学校が始まったばかりのことを思い出して気分は沈みます。とりあえず、自己紹介から始まりました。なんだかブルーな気分のまま自己紹介が終わり、早速道具を借りて削り始めました。カービングは一日下を向いてラインの位置などを確認しながらの作業です。首が詰まってきてなんか背中はバリバリにこっていて、もうつらいのなんの。 しかもこの学校は急に思いつきで予定を決めるので、先生の声ひとつで日曜出勤です。ですので今週は日曜から既に学校に行ってます。なんか一日損した気分です。とりあえず、日曜日は自己紹介と道具の使い方とスケジュールの確認、そしてモデルの選択まででした。月曜日から今日までひたすら削ってますが、感想としては新しいものを作るとか、作品を作るというのは僕にはあってないです。やっぱリペアーのほうが楽しいです。 粘土でモデリング 途中経過まで。また、完成したら載せます。 #
by scott_hachisuka
| 2006-02-22 07:01
| 学校
この1週間、査定の準備で忙しくすごしていました。今回は半年間の査定ということで、アカデミックな内容と技術的な内容を5段階で採点されました。1が一番いいのですがめったにもらえないそうです。僕は技術が2点、アカデミックが3点で何とかこの半年間はパスできまして、単位の取得に至りました。ペーパーワークは「見積もり」、「作業進行表」、「批評」、「熟考」などなど技術的な内容を全て書き留めてレポートをつくることと、自分で自分の作業を批評することが大切とされてます。それでその半年の内容をBADA(ブリティッシュ・アンティーク・ディラーズ・アソシエーション)の会長さんはじめ、そこの会員で売り手のかた、美術館代表の方などから構成される3名の方へのプレゼンが義務つけられてます。これは直接僕達の点数には関係ないのですが、僕達の先生の査定となります。つまり僕達に変なことを教えてないかとか、ただしい歴史認識にもとづいた討論がなされているか、僕達に直接関係することといえば、最終的にレストアーとして認定を受けるのに適した人材かどうかなどをチェックする機関として存在しています。さて、僕の生まれてはじめてのプレゼンですが、しどろもどろでした。頭が真っ白になって固まること2回、あまりに緊張しすぎて日本語で「はい」と返事すること2回、完全に失敗しました。それでも、3名の方は気長に辛抱強く耳を傾けてくれて25分間はあっという間に過ぎていきました。今は、とにかく終わったということでほっとしてます。次は28日行われる10分間の歴史に関するプレゼンテーションです。これが終われば本当に後は、たのしい、たのしい学校生活が復活します。頑張ろうと思います。 さて作業の方では、ぞっとする出来事があって少し木のすごさを思い知らされました。 それは、トレイの作業です。表面にしか仕上げのベニヤを張っていないのでベニヤの収縮に引っ張られ反り返っていました。これをまっすぐにする作業です。steam boxを使います。何度も蒸し器に入れて木の繊維の奥深くまで水分を入れて柔らかくします。その後クランプでまっすぐに固定すること1晩、トレイは少しまっすぐになりました。 しかし、まだ平らというわけではなく、先生は納得がいかないということでそこから10分間3回立て続けに蒸し続けました。3回目が終わったときには完全にまっすぐになっていました。またクランプで固定して1晩おきました。それから1週間ほど乾燥させ、余計な水分を飛ばした後、裏面を水性の薬品でシーリングしました。薬品を裏面に塗ることで、それ以上水分が蒸発するのをふせぐためです。これは完全に勘を頼りに作業してますのでやってみないとわかりません。 その後また1週間が経ち、気がつくとトレイが少しそり帰ってきていました。先生と相談して裏側にぬれたラグを敷き、もう少し水分を吸わせてみることにしました。しかし、それだけではまだ反りが残っています。ココからが失敗の始まりですが、今度は僕は先生に相談なくもっと沢山の水分を吸わせることにしました。それを金曜日の夜にして、そのまま土曜、日曜とチェックすることなく月曜日に学校に行ってみると、見事にトレイが逆方向に反り返っていました。びっくりしました。もうあ然です。 「うそ。」「まじ。」 実はこのトレイはBADAの会長さんの所有物で、水曜日には査定にやってきます。「ああー、終わった。退学か?」なんておもってたら、みんなと笑いながら先生がやってきて「昌彦、トレイがバナナみたいに曲がるなんてどうやったの?」意地悪な質問をしてきます。「うっせ。」と心で悪態をつきながらとりあえず乾かすことにしました。 昨日、見事にトレイは平らになり、もう一度シーリングをしてこれをキープしたいと思っております。こんなに木が動くなんて、目の前で毎日形を変えていくのを目の当たりにして、水分と木の関係がどれだけ微妙なバランスで保たれているのか思い知らされました。 19世紀の作品ですが、まだ木は生きています。ちょっと怖かったです。 #
by scott_hachisuka
| 2006-02-16 04:45
| 学校
日々精進。 技術的なことの修行は楽しくてしょうがないのですが、会話となるともうほんと苦痛です。 日本語でもフィーリングってあると思うんですけど、どうしても相性の悪い人って、人それぞれいますよね。 英語も同じだなーと最近つくづく思います。 経験値や感性がにてると、つたない僕の英語でも十分伝わります。 例えば、今何やってるの? これって相手にしたら仕事のことか、作業のことか。今僕と話してることか。 沢山選択肢があります。この中の聞きたいことを一発で答えてくれると気持ちがいいものです。当然この聞き方は僕が悪いのです。 相手が聞いてくれるだけの精神的な余裕があって、リラックスしてると、案外期待した内容の話が帰ってきます。 これが、相性の悪い人だとまったく伝わりません。 僕は日本語でもうまく話が伝わらなくてもどかしいことがあるのですが、英語でも同じようなことが起こります。 聞き返されてからしどろもどろになって、全ての文章を説明してるうちに雰囲気が冷え切ってきてなんとも切なくなることが多々あります。 まあ、彼らからしても僕が何度も聞き返すことでそんな気分になってるですから、しかたのないことなのですけど。 しかし今日は比較的うまく話が伝わったなーなんて思いながら、 この書き込みをする前に何人かのイギリス在住のかたのブログを見ました。みなさん天気のよさのことをかかれてました。 そのぐらい久しぶりに良い天気が続いてます。 良い天気は間違いなく僕たちの精神状態に影響しています。 クラスメートもニコニコでした。週末の金曜日ということもあり、久しぶりにリラックスして会話が弾んでいるようでした。 「ようでした」というのは、僕はテーブルを囲んでお茶を飲みながら会話をするのが苦手です。 座っているだけで嫌な汗が出てきます。テーブルがなかったり、何かしながらならおしゃべりは大好きです。 特に歩きながらとか。作業場のクラスが終了した後の会話とか、外のベンチで座っての会話とかの方が好きです。 それでもなるべくみんなと一緒にテーブルにつくのですが、いまだにネイティブのスピードにはついていけません。みんなも僕をあえてそっとしておいてくれます。ホントにクラスメートには感謝。 睡眠が足りていて、頭がクリヤーだと最近少しづつ話もできるのですが、ほとんどの日は意識朦朧としてるのでさっぱりです。 今日は比較的カラーリングの調子が良くて気分も良かったのですが、サブチューターのマイケルがこんな話をしてくれてもっと気分が良くなりました。 「色というのは教えられる要素が少ない。木工はやればできる。人によっては色を見分けられないこともあるし、作れないこともある。だからカラーリングは自分で覚えるしかないよ。」 僕は前職でカラーリングに関しては基礎もならいましたし、経験もさせてもらってるので比較的スムーズにこの作業には入っているのですが、クラスメートはかなり混乱してます。 今、お盆のベニヤの割れたところをえぐって部分的にパッチをいれて着色しています。これは前職の人にしかわからない話なのですが、ムク材の上に顔料でも染料でも使って作った色を傷口の上にのせていくと通常"しろうき”ととばれる状態になります。着色したところで光の屈折の仕方が変わって陰ができるので、一方向からは色があっているのですが、一方向からは影の色になって見えるので真っ黒です。 コチラの染料と顔料、それにシェラックを使って今日やった感触では"しろうき"せずに直せます。これ、とってもすごいことです。前職のときはただ諦めるしかなかったことなのです。 木に下地色を入れてからポリッシュでシーリングして、また色を薄く入れてシーリングします。これの繰り返しで着色を完成させます。あと2~3日で仕上がると思います。乞うご期待。 #
by scott_hachisuka
| 2006-02-11 11:16
| 学校
クマモモさんから道具を見たいというリクエストをもらいました。とりあえず良く使うもから紹介したいと思います。修復方法は家具ごとに違うなあーと最近思うようになってきました。同じような傷でも原因が違えば取り組み方も違いますし、まず全ての家具の寸法や形状がちがいますもんね。よく考えて、創意工夫しながら作業を進めます。ですので本当に沢山の道具も必要です。 製図道具、文房具からはさみ、歯ブラシ、生活用品一式なんでも使います。たまには電子レンジやポット、トースターなどの電化製品なども使います。 今日は特によく使うもの、お気に入りのものを紹介します。 ケトルです。家具の解体のとき似よく使います。これでお湯を沸かします。30秒もあれば沸きます。唯一コチラの電化製品で優れもの。アニマルグルーは高温で溶けますので、解体時にジョイント部にこれで沸かしたお湯を注入したり、ばらしたあとでこびりついたグルーを溶かしてふき取ります。寒くてすぐお湯が冷めますので、何回も沸かします。手軽で使いやすいです。 グルーポットです。アニマルクルーを水でふやかすと、イクラみたいに水を含んで膨らみます。いや蛙の卵、でも触った感じは結構弾力があって、グミみたいです。あのー、ほら、ちょっと前によくミルクティーに入った黒いグミみたいなもの打ってましたよね、コンビニとかでも。あれのあめ色版です。その状態から溶かして使いますので、このポットの中にお湯をはり温度を保つことで、グルーをとろとろな状態でキープします。溶けたグルーは若干うんこのようなにおいがしますので絶えずふたをしてます。体に染み付きそうで嫌です。不快な臭さです。 ごく小のやすり。木工用のごく小のやすりです。上から2番目の荒さで、スイス製です。やすりと洋のみはスイス製が人気のようです。ベニヤの木口を滑らかにしたり、かたちを合わせるときなど主にベニヤ細工に使ってます。 西洋カンナ。僕はこちらにきてから本格的にかんなを使い始めたので、日本のかんなよりも使いやすいです。沢山種類があってそれぞれ用途が違うのですが、基本的に長いものは長いものへ、小さいもの短いものには小さいものを使ってます。特に中くらいの大きさのものは(ブロックプレーン)木口や逆目にも負けないので重宝してます。 つき鑿。非常に長いです。コチラの作業では長い面を仕上げることが多くあります。組み手や仕口などのさいごの仕上げに使います。パッチの組み合わせの際に同じ角度で平面が欲しいときなど広くそげるこの鑿は重宝します。また作業していて一番楽しいときでもあります。ストレートに手が入らないときのクランクした鑿は壁際や段差のあるところなどでよく使います。なかにはダボテイルの底をそぐときのための三角形の鑿もあります。先生は各用途に合わせて買ってるうちに120本の鑿を持つようになったそうです。それだけいろんな状況がありえるということなのでしょう。 修復の作業は各家具において異なる方法をとりますので、どうやって直すかを考えている時間と、治具の制作時間、準備に非常に時間を費やします。全て決めてから迷わず行動に移さないとオリジナルのパーツは1点ものですから失敗したら終わりです。ですのでプラン通りに進行するかどうかを、まず別の木で試してから本番に移ることもしょっちゅうですので、さらに時間を費やします。そして必ず研ぎにかなりの時間を費やします。硬い木ばかりなので一日に何回も研ぎます。作業が終わる頃にはぐったりです。ですが作業自体の時間は短いのですが、これだけの準備をして始めてよい作業に繋がると思っています。プランも研ぎも練習も全て工程のうちです。 また変わった道具を使うときにはお知らせします。 #
by scott_hachisuka
| 2006-02-06 04:30
| 家具
もうすぐ1年の半分が終わろうとしてます。この半年分の査定が始まります。生まれて初めてポートフォリオなるものを作りました。写真の選定からレイアウト、フォントまで細かく指摘をうけてほぼ、1週間がかりです。先生がとてもポートフォリオの出来上がりに気を配っていて、注意深く何度も確認をしてくれます。この作品集が後の僕達の進路をきめるのでとても大切なものだといってました。このポートフォリオが良くないと面接にさえこぎつけないこともあるそうです。 僕はわかりやすく1ページに3枚。作業前、作業中、作業後でシンプルにまとめました。まだまだ家具のイントロダクションなどで物足らないところがありますが、これから1週間かけて練り直したいと思います。 作業前 作業中 作業後 ミラクルです。 本当はそがれているカーブのラインに沿って最小限の大きさでパッチを埋めなければならないのですが、へたくそな僕は3日費やし、4個目にしてやっと収まったのでした。 半べそです。 今週はトレイのベニヤ表面のわれとはがれてなくなったところの修復をしていたのだが、きれいにパッチが収まらず試行錯誤の末まあまあというところまではこぎつけた。先生に見せると「いんじゃない。」とせっけない返事。カチンときて、もう一回やろうとしたら、「OK」とのこと。うまくなるまでには何年もかかるからまた別の機会に練習しなさいとのこと。メイキングのインレイやマーケトリーなど(ベニヤのくりぬいた形で木の中に埋め込んだりして色の違いを利用して装飾する方法。)毎日それだけを作業して何年もやってる人とは同じレベルにはならないのかもしれない。これはこれからの修復で避けては通れない項目のひとつなのでじっくり取り組んでいこうと 思います。 前回の話のキクイムシがとおった跡の写真。 流れるような線が見えると思うのですが、もしこれがカットした木の中に虫が通ったラインなら このように流れるような線は見えないと、おっしゃってました。虫が食った後でこの木をカットしたからこのように見えると。つまりこの木は再利用された可能性が高いと。こいうふうに年代を推定していくのだそうです。 次回はクマコさんのリクエストにお答えして道具を紹介します。 #
by scott_hachisuka
| 2006-02-03 06:23
| 家具
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