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またまたスケジュールの確認を怠り、すっかり今日ロンドンに行くことを忘れていました。 で、普段着で強制連行されるように車に乗せられ、先生はじめみんなネクタイ着用の中、かばんにはインパクトドリルがはいったまま普段着で一路ロンドンへ。 今回の訪問はペストアタックとBADA アンティークフェアーです。 とりあえずペストアタックだけ。日本ではあまり知られていない話ですのでこれからアンティーク家具を買おうとする方は是非読んでみてください。 まず、ノッティングヒルの近くでウッドワームを殺す装置を見学しに行きました。 ウッドワームというのは、広葉樹、特にウォルナットなどによく見られるキクイムシです。 キクイムシは辺材とアニマルグルー(動物性 膠)が大好きで、家具の中を食い尽くします。 アンティークの本などにも昔はアニマルグルー(動物性 膠)が使われていたので、よくこの虫にたべられてぼろぼろの本があるそうです。 本当に木がスポンジのようになります。 OAKの椅子の座面を支えるレール部分 硬い木なのですがこのとうり。 ![]() 表面には小さな穴が無数に開いています。中はカステラがぽろぽろこぼれるようにぼろぼろになります。ですが、だいたいのアンティーク家具には生息しています。ですのできちんとした治療を施しているかどうかが、きちんとしたアンティークショップであるか、また工房であるかの見極めにもなります。 ビーチのSOFAのフレーム裏側 虫とカビです。 ![]() 購入した家具に虫が居るかどうかの判断は非常に難しいのです。 行動周期が非常にかたよっていて、家具に生息するような虫ですと4年に1回成虫になって行動するような虫もいます。購入したときはたまたま成虫になっていなくてわからなかったということもあります。 これはマホガニーの部分には虫がついていないのですが、ビーチで作られた真ん中のブロック部分は虫がついています。 ![]() ですので写真のような装置に家具を入れて25工程をへて虫を退治します。 基本的には虫が死滅して家具に影響のない熱、50~52または53度あたりの熱をあたえます。大きな電子レンジに入れるような感じです。そして絶えず部屋の中の水分の調節もされてますので焼け焦げたり、必要以上に水分を蒸発させることもなくオブジェクトに必要な水分をキープします。 ![]() 基本的に有機的な処理ですしオブジェクトの何かを変化させるほどの高温でもないので非常に高い信頼をへています。ヨーッロパ各国美術館、博物館などから色んなオブジェクトが送られてくるそうです。家具、紙、金属、カーペット、絵画などなど。 社長いわく「害虫たちには3回ありがとうと言わなきゃいけない。」つまり飯を食わせてもらってると。 コチラの社長いわく、たとえどんな虫であっても科学的な除去材は表面的な虫を殺すだけで、一年もすればまた虫はわくので同じことの繰り返しであるし、根本的な対処になっていないといっておりました。また基本的に一度熱でもって完全に虫殺しをした木材には虫がつくことはないそうです。これはまだ科学的には立証されていないのですが、これまでの例としてクレーム報告を受けていないそうです。 一度部屋に入れられた家具は完全にコンピューターで管理されていて、25工程すむまで、8時間から24時間ほどで終了するそうです。 日本ではシロアリが有名ですが、同じような害虫としてイギリスや欧米ではこの家具につくキクイムシの除去とその後の対処に関しては非常に気を使っています。日本のお宅でも輸入した家具にキクイムシが居て、日本についてからふかし床などを食い荒らすような例もありますので、 必ずアンティーク家具を買う際はお店の人に一言どのような対処をしているかきいてみると良いと思います。 この木にさした金属から全てのデータがコンピュータへ送られます。 ![]() 色んなものがつるせるようになっていて、天井から熱が送られます。 ![]() #
by scott_hachisuka
| 2006-03-24 07:35
| 家具
今週は木工で悪戦苦闘。 SOFAを中心に作業を進めてます、何度も練習を繰り返して、鑿と鉋を研ぎなおしてやっと接着できる段階まできました。が とりあえず今回はBull TableのFirstConditionの報告とクラスメートの紹介です。とうぶんこんな感じで進めてみたいと思います。 うちのクラスメートは最高です。 先生およびサブチューターも面白い人たちです。 生徒が9人、先生2人です。 イギリス人が6人とオランダ人が2人ドイツ人が2人日本人1人の計11人です。 ワークショップの中は2列にベンチが並んでいて、 2台のベンチでひとつのついたてをはさんでいます。 ついたてを使って道具を引っ掛けたり並べたりベンチの上はオブジェクトと道具でいっぱいです。 僕の裏側はイギリスの北の方からきたD君。 彼はアーティスト嗜好が強く、この間のプレゼンテーションでは将来ペインターになりたいということで僕達は度肝を抜かれました。「じゃーそういう学校に行けばいいのに」。まあ 人それぞれですな。非常に自然を愛しているので作業中でも空の色や雲の形に見とれていることもあります。 僕のベンチの前には車椅子のRさん。 Rさんは日本からよく来たといつも褒めてくれます。ただきたというだけですごいことだそうです。勇気づけられます。彼は車椅子ですが一通りの作業を全てこなしますし、運動神経がいいので活発にWEEKENDをすごしています。子供とクリケットをしたり、サイクリングにフランスに出かけてみたり、色んなスポーツに関心があります。おしゃべりがうまくていつもみんなを笑わせています。 頼りになるおじさんだなと思ってたら、この間 「俺は昌彦より若い、だからもっと遊びたいし、楽しいことをやりたい」と車椅子の上でラジオの曲に合わせて踊っていました。意味はわかりませんが、たぶんまだまだ元気だということでしょう。 残りのクラスメートはまた次回。 作業の進展を報告したいと思います。 19th BULL TABLE これは共同作業でみんなでパーツを分け合って直しています。 全体図;全体的に汚れています。 ![]() 僕の分担は引出です。 ![]() 木工の部分も数箇所直しがありました。 引出の底板が釘でとめられていたのですが、これも木の収縮で底板が縮んだ際に割れたとおもわれます。 ![]() フレームの木が収縮して古真鍮が押されて出ています。 たたいたり、曲げたり、はさんだりしてフラットにしてから接着しなおします。金色の古真鍮も一度はずしてクリーニングをします。 ![]() 引き出しの下端の角、トートシェルが割れ下地も欠けていました。 ![]() この部分がえぐれている理由は定かではありませんが、たぶん木の枝の節だったところをえぐって詰め物をしていたと思われます。 ![]() まだ修復途中ですが次回は途中経過を報告したいと思います。 #
by scott_hachisuka
| 2006-03-19 05:40
| 学校
![]() といっても、先週プレゼンが終わったばっかりなのでまだ作業にのめりこめていないのですが、今週は、先生との打ち合わせにも時間をとることができ、サブチューターの意見も聞かせてもらい、その後の作業の方向性が固まってきたので、実労働は少なくても、イメージとしてはかなり進行している感じです。その話はまた次回ご報告します。 今週は火曜日にビクトリア・アンド・アルバート美術館に見学に行きました。ロンドンまで車で2時間かけて先生に連れて行ってもらいました。 美術館の中ではガイドさんについてもらってひととおり見学しました。約1500年ごろから1900年ごろまでを1時間半で見ました。毎週フアニチュアーヒストリーの授業を受けているので、そんなに心配するほど内容が難しくはありませんでした。毎回新しいことが行われる前には英語の理解力が間に合うかどうかで気をもみます。気をもんだからって英語がわかるようにはならないのですが少しでも吸収したいですから、先にノートでもくれれば単語のひとつも調べていくのですが、そうもいきませんので、何とかわかるまで質問するしかありません。 日本のコーナーが設けられていることに驚きました。家具の歴史の中でもずっと後のほう、19世紀中ごろから後半にかけてですが、日本の掛軸や陶器、漆塗りの器などの蒔絵からインスピレーションを受けたイギリスのデザイナーが日本の雰囲気を家具の装飾や絵画やポスターなどに取り入れていることをしりました。特に日本の黒塗りの漆の雰囲気と霞がかった掛軸などの神秘的な雰囲気は非常に強く印象に残ったようで、わざわざ織物の中に横線を強調していれて霞がかった雰囲気を出したり、本物黒漆は無理でもペイントで何とか黒と金のコンビネーションを家具の装飾に取り込んだりしています。 ![]() <日本文化の影響が見られるサイドボード> 17世紀には中国や日本の漆の真似をして、家具の仕上げに取り入れるよう試みていますが、当然コチラの湿度と気温ではうまく塗り重ねることができずその雰囲気を出すために相当苦労してイギリス流の方法を考え出したようです。コチラではその技法をジャパンニングといってます。そうまでして仕上げにバリエーションが欲しい理由というのはなんだったのでしょうか?またなぜそうも漆に見せられてのでしょうか?今後の課題になりました。 自分の国が留学先にそのような強い影響を与えているとなると誇らしい気持ちになります。その反面もっと自分の国のことを勉強しないといけないなと思い始めました。 美術館では古い家具を扱っていますので、とても光を抑えた展示になっています。このような展示用に資料としての家具を扱う人たちをコンザベーターといってます。僕の中では彼らは研究者であり学者であります。ですのでホワイトカラーという感じがします。 彼らはこの後どのような処置をすれば家具が長く生きながらえるかを検討して実行していきます。 ですので美術館のこの暗さは彼らの判断として光を与えずに保護する方針を採らないとこの家具のダメージは進行するとみなしたのでしょう。ほとんど家具の全体像が見えないような場所もありますが、それも家具にとっては必要なことなのです。 ロンドンに来られたら一度見学に行くことをおススメします。寄付を募っていますがタダで入れます。 ![]() <カフェで一休み> 家具は時代によって主に使われる木の種類が異なります。OAK、WALNUT、MAHOGANY、SATINWOODと流行が移り変わります。そして、スタイルもルネッサンス、バロック、ロココ、ネオクラシカル、リバイバル、アートアンドクラフトへと移っていきます。そのような順を追って家具を見られることはやはり素晴らしいことだと思います。 ![]() <ロバート・アダム-デザイン/トーマスチッペンデール作 黄金コンビの椅子> ですが、僕としてはこのような展示されている家具は標本の昆虫と一緒でなんとも寂しい感じを受けます。やはり家具は使われてナンボ。レストアーは使えるように直してナンボ。というきがします。触れない使えない光にも当たれない、何か本末転倒のような気がします。 そのような感想持った後、これまた非常に貴重な体験ですが、美術館のワークショップに行くことができました。今ワークショップでは2010年に向けての展示会の準備に追われておりました。5人のコンザベーターと一人のギルダーが迎えてくれました。それぞれのオブジェクトの説明をしてくれました。16世紀のOAKのチェストや18世紀の朱漆のチェストドロワーなどが直しを待っているようでした。というのは、彼らは自分ひとりでプランをたてて実行するわけではありません。キュレーターが大まかなプランを立てレストアーおよびコンザベーターはそのプランに対して技術的にできることできないことを振り分けていきながら数人がかかわってプランを立てるのだそうです。ですのでプランを組むのに数週間かかりますし、クリーニングだけで数百時間を費やしたりします。非常に歴史的価値の高い家具ですので、慎重にことを運ぶ必要があります。僕達とは注意を払う箇所が違います。基本的にはこれから長く保存するために今必要なことをしていきますし、いろいろな展示会に見せるために必要な仕上げ面に特に注意を払っているのです。僕には到底勤まらない仕事だなと思いました。 今回の見学でアンティーク業界にもさまざまな考え方や世界があることを知りました。人によってアンティークとのかかわり方もいろいろです。以前から気持ちの中にははっきりとあったのでしょうが、しっかりと意識として確認できたのが今回の収穫です。 やはりアンティーク家具は、持ち主にしかわからない家具への熱い思いと、それを組んで何とか直したいと思うレストアラーとの関係が僕にとっては面白いです。使うために強度を保つことと、オリジナルを最大限残すという相反するお題に向かい色んな方法を考えることが楽しいです。僕にとってはまず使える家具が一番価値があります。だからこそ直し甲斐があります。全てが一点もので、全ての作業が一発勝負という緊張感が好きです。よく日本に居るときになんで留学するのとよくきかれたのですが、やっと自分でもなぜこの仕事がやりたいのか少しわかってきた気がします。みんなクラスメートは動機がはっきりしていて羨ましかったのですが、これからは僕も少しましなことが言えそうです。これからも少しずつ自分の心の中にあることが解明できると嬉しいです。 写真は出発前に思い出したようにとったので内容を読むのを忘れました。 ![]() ![]() #
by scott_hachisuka
| 2006-03-12 08:24
| 家具
やっと、終わりました。 年末からこのたった10分間のためにどれだけ心労を重ねてきたことか。 事の起こりは、まず、お題の選択ミスです。 みんなは賢く選択してました。 なるべくメジャーでSTYLE期間の短いとこからチョイスをしていました。 僕は「19世期バナキュラーフアニチュアー」という、 とてもマイナーで情報の少ない分野を選びましたので、 相当資料集めが大変でした。 バナキュラーファニチャーは、カントリーファニチャーなどとも言われ、 要は一般の人が毎日生活のために使う家具のことです。 ちなみによく僕達が見ているアンティーク家具は、 当時としては上流階級の人が使っていたものと思われます。 大学院や大学の先生達の間でもまだ研究が進んでおらず、 断定して言える情報も多くはありませんでした。 とにかく、インターネットと本でひとしきり読み込みをして、 わかったことは、なんと19世紀には純粋にバナキュラー家具といわれるものは、 つくられることが非常に少なくなっていた。ということでした。 では、先生は何で「19世紀」とお題に添えたのかという新たな疑問がわいてきました。 このプレゼンテーションは一般の歴史の授業の一環で行われております。 ですので、単位取得には必須項目のひとつです。 そこでピーンときました。これは家具を備え付けて、 僕達の興味をひいているけども、 間違いなく先生は歴史の方に重点を当ててるはすだと。 そこからはことがスムーズに運びました。 資料も歴史のものを多めにして写真を多用して、 スライドに少しずつ説明書きをつけていきました。 何とか2月28日 午後3時45分から10分間の 人生初のプレセンテーションは終了しました。 緊張のあまり何をしゃべったのか覚えてませんが、 終わったときには、クラスメートから温かい拍手と ウエルダーンのお言葉を頂ました。 本当に嬉しかったです。またクラスメートとの距離も ぐっと近づいた感じがします。 #
by scott_hachisuka
| 2006-03-04 19:21
| 学校
今週は日曜日の夜から、水曜日の夜までカービングの短期講座。 削り方、道具、細かいラインの出し方や、オーナメントの規則を習い一応短期集中講座のカービングクラスは3日間と半日で終わりました。かなり緻密に線を出す練習が必要なので道具をもっとよく知って、よく砥いで、下絵をきちんと描いてから次回は挑みたいと思います。 ![]() 次回というのは、もう既に自分のオブジェクトの中にカービングの必要な部分がありまして、すぐに取り掛かりました。ソフアーの足の部分なのですが、スクロールと呼ばれるリージェンシー時代の特徴的なオーナメントのひとつです。足4本に対して2個ずつついていたのですが、1つを残してあとは全てなくなっていました。ですので残りの7つを作らなくてはいけません。 ![]() 手順としては、正しい木目を持つ木を選択、模様を写し取って下書きをします。このとき人によっていろいろな方法があるそうです。単純にカーボン紙を使う人、全て計測してきれいに書き直す人、型を取って書き写す人などです。僕は単純にカーボン紙で書き写しました。これがなかなか難しくてうまくいきません。200年前に機械はないので手で作られていると思うのですが、なかなか規則的に線が変化しています。やはり手で書き写すとでこぼこしてきます。まあその辺は練習ですので後回しにして、とりあえず書き写しました。その後カービング用の鑿を使って円の内側を削り始めました。うまくいきません。カービングの先生は角度をフリーハンドでつけながらスーと削っていきましたが、僕はそのようにはうまく手がすすみません。6回目ぐらいで先生に聞きにいきました。以外にカービングは体が疲れます。既に腰はパンパンに張ってますし、目もかすみだしました。先生は笑いながら5本の鑿を持ってきて、円弧にぴったり合う丸いのみを選び少しづつのみを進めていきます。「ああーなるほどね」って日本語でしゃべってました。結果12回目にして削り方までは良しとされました。仕上げのエボナイズドはかなり塗膜を乗せるのでかなり深めに掘るように言われました。 しかし、まだトレイスの仕方が完璧ではないということで来週はそこから取り組むことになりました。 ![]() ![]() 先週、ソフアーの持ち主が話し合いに来られて自己紹介をさせていただきました。とても気さくなご夫婦で見積もりにも直し方にもOKをいただきました。これからやっとソファーも始動します。楽しみです。 #
by scott_hachisuka
| 2006-02-25 05:31
| 家具
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