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この1週間、査定の準備で忙しくすごしていました。今回は半年間の査定ということで、アカデミックな内容と技術的な内容を5段階で採点されました。1が一番いいのですがめったにもらえないそうです。僕は技術が2点、アカデミックが3点で何とかこの半年間はパスできまして、単位の取得に至りました。ペーパーワークは「見積もり」、「作業進行表」、「批評」、「熟考」などなど技術的な内容を全て書き留めてレポートをつくることと、自分で自分の作業を批評することが大切とされてます。それでその半年の内容をBADA(ブリティッシュ・アンティーク・ディラーズ・アソシエーション)の会長さんはじめ、そこの会員で売り手のかた、美術館代表の方などから構成される3名の方へのプレゼンが義務つけられてます。これは直接僕達の点数には関係ないのですが、僕達の先生の査定となります。つまり僕達に変なことを教えてないかとか、ただしい歴史認識にもとづいた討論がなされているか、僕達に直接関係することといえば、最終的にレストアーとして認定を受けるのに適した人材かどうかなどをチェックする機関として存在しています。さて、僕の生まれてはじめてのプレゼンですが、しどろもどろでした。頭が真っ白になって固まること2回、あまりに緊張しすぎて日本語で「はい」と返事すること2回、完全に失敗しました。それでも、3名の方は気長に辛抱強く耳を傾けてくれて25分間はあっという間に過ぎていきました。今は、とにかく終わったということでほっとしてます。次は28日行われる10分間の歴史に関するプレゼンテーションです。これが終われば本当に後は、たのしい、たのしい学校生活が復活します。頑張ろうと思います。 さて作業の方では、ぞっとする出来事があって少し木のすごさを思い知らされました。 それは、トレイの作業です。表面にしか仕上げのベニヤを張っていないのでベニヤの収縮に引っ張られ反り返っていました。これをまっすぐにする作業です。steam boxを使います。何度も蒸し器に入れて木の繊維の奥深くまで水分を入れて柔らかくします。その後クランプでまっすぐに固定すること1晩、トレイは少しまっすぐになりました。 しかし、まだ平らというわけではなく、先生は納得がいかないということでそこから10分間3回立て続けに蒸し続けました。3回目が終わったときには完全にまっすぐになっていました。またクランプで固定して1晩おきました。それから1週間ほど乾燥させ、余計な水分を飛ばした後、裏面を水性の薬品でシーリングしました。薬品を裏面に塗ることで、それ以上水分が蒸発するのをふせぐためです。これは完全に勘を頼りに作業してますのでやってみないとわかりません。 その後また1週間が経ち、気がつくとトレイが少しそり帰ってきていました。先生と相談して裏側にぬれたラグを敷き、もう少し水分を吸わせてみることにしました。しかし、それだけではまだ反りが残っています。ココからが失敗の始まりですが、今度は僕は先生に相談なくもっと沢山の水分を吸わせることにしました。それを金曜日の夜にして、そのまま土曜、日曜とチェックすることなく月曜日に学校に行ってみると、見事にトレイが逆方向に反り返っていました。びっくりしました。もうあ然です。 「うそ。」「まじ。」 実はこのトレイはBADAの会長さんの所有物で、水曜日には査定にやってきます。「ああー、終わった。退学か?」なんておもってたら、みんなと笑いながら先生がやってきて「昌彦、トレイがバナナみたいに曲がるなんてどうやったの?」意地悪な質問をしてきます。「うっせ。」と心で悪態をつきながらとりあえず乾かすことにしました。 昨日、見事にトレイは平らになり、もう一度シーリングをしてこれをキープしたいと思っております。こんなに木が動くなんて、目の前で毎日形を変えていくのを目の当たりにして、水分と木の関係がどれだけ微妙なバランスで保たれているのか思い知らされました。 19世紀の作品ですが、まだ木は生きています。ちょっと怖かったです。
by scott_hachisuka
| 2006-02-16 04:45
| 学校
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