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修復保存の技術、論理を必要とする家具の数はかなりあるように思う。 問題はコストである。多くの有名なお城などでもそれにかける予算は少ない。 この場合、日常使う家具とは違うので、歴史的な価値を保存するという意味合いが多く。今の状態を長く保つことが最大の目的である。 それと比べて、学校に来る家具はほとんどが毎日の生活で使う家具。そのために修復を施すことを目的としている。この違いは、家具の価値を変えるポイントに入ってくるのでクライアントの修復に対する目的をしっかり把握する必要がある。 ほとんどの家具は1年契約であずかる。実際に生徒と先生で家具一点一点に見積もりを出す。実際の生徒の作業は1時間あたり、12.5ポンド。これは安いのか高いのかわからないが、大切な家具を預けるには組織に預ける安心感があるだろう。 びっくりするのは、イギリス人の家具修復に対する認識。 学校以外の家具修復の状況はわからないが、1年や2年ぐらいは待つ。時々3年とか。本当にいい仕事をしてくれるのであれば待つ。 一つの理由としては、修復待ちの大きな家具の保存場所にに困るので、修復される日が来るまで学校で預かってもらえることはなかなかの利点のようである。 家の中に状態のよくない家具があることは精神衛生的にもよくないだろうから、大体壊れて持ってくるか、買ってすぐ持ってくるか、気軽にちょっとよってみたというかんじである。本当に生活のひとつの行事に組み込まれていることがよくわかる。 もう一つはノラリクラリと生活しているように見えるイギリス人のレスポンドがびっくりするほど早いこと。これは本当にびっくりする。通常の役所や企業の対応は3ヵ月後にご返事しますなんて事が普通でコチラの欲しい情報やレターなどを取り寄せるのにものすごい労力を払うのに、この家具にかかわる人たちは、2から3日ほどでほぼ返答がくる。学校で相談しましょうといえば、喜んで来てくれるし、もうこの修復のプロジェクトが楽しくてしょうがないようである。 これはが生活に組み込まれると生活が少し潤うように思う。 一つの家具をとうして、個人と学校と専門家と生徒とが出会う。 いろんな年代の、いろんな場所から来た人と出会う。 ましてやこんな辺鄙なところに、日本人の僕がいると、結構喜んでくれる。僕としても、いろんなタイプのイギリス人をみられてたのしい。 例えば今僕が扱っている17世紀ハイバックアームチェアーで言えば、まず学校側に先生と生徒、アメリカの家具歴史家、イギリス人の家具歴史家、イギリス人のテキスタイル専門家、タッセルの専門家、ジャパンニングの専門家、そしてクライアントとこれだけの人とたちが交流してひとつの家具を直そうとしている。これだけでもこの人たちの仕事としてペイすれば経済的にも広がりを見せるし、お互いの家具に対する知識や興味を増やしていき、家具修復をとうして経験したお客さんの経験がまた知り合いの人たちへ世間話として廻っていけば、家具修復が世間一般にもずっと広がっていく。 ということで今年はお客さんやいろんな専門家と直接会話をしていろんな人と交わりながらプロジェクトを進めることになる。 このドーリッチハウスしかり、ジャコビアンチェラブなどもそうである。ここら辺りの交渉能力や進行状況をうまく把握できるようになれば、また修復かとしても一歩レベルが上がるともう。 ん。がんばろう。
by scott_hachisuka
| 2006-10-28 21:46
| 家具
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