|
さてさて今回はオランダ人のFくんとHさんです。 彼はオランダから来ています。F君はこのクラスの中では1番の経験者です。 高校を卒業して、はじめから家具の修復師になるつもりで、家具製作を3年、修復を4年勉強しています。 学校の先生も実技に対しては何も言うことがないというほどの凄腕です。 音楽が大好きで、作業が終わって部屋に帰るとテクノからジャズまで幅広い彼の音楽コレクションが鳴り響きます。 彼は高音の大きな音が苦手です。 いきなり木工機械や掃除機の音が鳴ると耳をふさいでいます。 ですが、部屋では音楽はがんがんです。 貴公子のような彼はいつも物腰が柔らかく非常に丁寧に人に接します。 いつも温厚な彼ですが、彼は今2年生のカリキュラムをこなしていまして、 非常に大変な毎日です。 ストレスがたまるといきなり音程をはずしながら大声で歌いはじめます。 工房にいるときはいつまでも道具を眺め、ひたすら木材の木目を見つめ、 考え込んでいます。tea time もベンチの前で作業を続けています。 かなりの家具オタク。 彼は絶えず、出会う人と名刺交換をし、あつく家具について語ります。 正式なフェアーにいくときは絶えずジャケットにネクタイでオールバックです。 僕は彼と今年出会えたことに感謝しています。 丁度この間、彼とゆっくり話す時間があったのでいろいろと質問してみました。 「修復をするにあたって何が大切ですか?」 「我慢、いい道具、マーケティング」 ん、こやつただの家具オタクではないぞ。 もっと技術的なことを言うのかなと思ってたら意外な意見でした。 彼が言うには、 「とにかくこれも商売のひとつだから、まずお金を定期的にもらえないと成り立たない、キャッシュフローをよくしとかないといけないんだと。とにかくこれは大切なことだ」と。 「時には意に沿わないことでも仕事ならやらなければならないし、そこに修復とはリペアーとはと難題を持ち出すよりも、お客さんがハッピーで家具の価値を損なわない直しならやるべきだ」いってました。 「ビジネスをはじめれば毎日5時で作業が終わるわけでなく、毎週休みが取れないかもしれない。それでもやりたいかどうかだよ。」 これは僕も仕事を持つということはそういうことだとおもっていたのですが、 彼のような中堅の修復師から、そのような言葉が出るとは思っていませんでした。 日本だけでなくオランダでも、商売に対する考え方は同じようです。 これからも彼とはゆっくり会話を重ねながら信頼関係を築いていきたいと思っています。 HさんはF君と同じオランダ、同じ学校からきました。 彼女はとても背が高く体も大きくて家具の搬出入などいつも男以上のパワーを発揮します。 正直、喧嘩したら負けますね。 ハートも強くてうちの先生にも対等に、物申します。 おかしいと思ったら必ず曲げずに戦います。 昔の日本のおかんって感じかな。 うちの先生は気難しさで有名なのですが、彼女にかかると先生もおとなしくなります。 先生が余りにもオーバワークで生徒の細かいリクエストを忘れると、みんなのところを紙とペンをもって回ります。 「先生への週末のホームワーク」 名前と要望をタイピングして先生に渡します。 ナイスアイディアなのですが、半分冗談半分本気な提案は、ドイツ人先生に通用するのかどきどきでした。 勿論大人ですから、冗談でとおるのですが、うちの先生はタイミングを間違えると偉いことになります。 Hさんは自信があったみたいで、笑いながら先生に渡してました。 先生も「やられたなー」というかんじで嬉しそうに受け取ってました。 勿論次の週には全て手はずは整っていました。 それからぐっと先生と生徒のコミュニケーションがうまく取れるようになったと思います。 Hさんかっこいいです。 実家はとても裕福らしく、ヨーロッパのいろなところに別荘があって、馬に乗るのが大好きだそうです。先生として馬に乗ることを教える免許を持っているそうです。 彼女も既に4年間就学してこの学校を総仕上げに来てますので腕はかなりのもんです。 二人とも英語がうまいのでそんなにコミュニケーションで困るということは無いのですが、 ストレスがたまるそうです。 僕達3人はよく英語、日本語、オランダ語、ドイツ語、フランス語で色んな単語を教えあいます。彼女達はオランダ語と英語それにドイツ語とフランス語も少ししゃべります。面白がって色んな単語を話しているのですが、イギリス人は照れて輪に入りません。 この二人をみて僕のオランダへの印象はすこぶるいいのです。 工房でよく最後まで残ってるのもこの2人ですし、誠実で勤勉です。 非常にシニカルで毒も吐きますが、けっして人の揚げ足とったり裏をかくようなことをしません。 正々堂々といつでも人と向き合います。 彼らいわくみんながみんながそうではないといそうです。 基本的には怠け者の人が多いのも事実だそうです。 僕達は別に国を背負ってきてるわけではないのですが、どうしてもその人の印象でその人の国を語ろうとしてしまいます。 ですが、あくまでも僕達はマイナーなジャンルのマイナーな世界にいることも事実です。 1人2人の人間を見て、全てを判ったような気になるのは危険なことだなと思いました。 ただ今年の生徒がそうなのか、偶然なのかわかりませんが、 みんな考え方のバランスが良くて、何か偏った家具バカや木工バカがいないのです。 みんな冷静に、思慮深く回りの動きをみて自分たちの意見を謙虚に言う人たちですので、 話をしていてもとても気分がいいです。必ずヨローッパがアジアより優れているといったような意見もありませんし、かといって自分たちの文化をひげもせず、素直に事実を受け入れている感じがします。イギリス人にしてもオランダ人にしても、自分たちの文化の悪いところもいいところも 「it is just style.」だそうです。そのまま受け止めることは大事なことだそうです。 願わくは、このクラスの人が沢山来年も残ってくれるといいのですが・・・。
by scott_hachisuka
| 2006-04-13 06:06
| 学校
|
ファン申請 |
||