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![]() といっても、先週プレゼンが終わったばっかりなのでまだ作業にのめりこめていないのですが、今週は、先生との打ち合わせにも時間をとることができ、サブチューターの意見も聞かせてもらい、その後の作業の方向性が固まってきたので、実労働は少なくても、イメージとしてはかなり進行している感じです。その話はまた次回ご報告します。 今週は火曜日にビクトリア・アンド・アルバート美術館に見学に行きました。ロンドンまで車で2時間かけて先生に連れて行ってもらいました。 美術館の中ではガイドさんについてもらってひととおり見学しました。約1500年ごろから1900年ごろまでを1時間半で見ました。毎週フアニチュアーヒストリーの授業を受けているので、そんなに心配するほど内容が難しくはありませんでした。毎回新しいことが行われる前には英語の理解力が間に合うかどうかで気をもみます。気をもんだからって英語がわかるようにはならないのですが少しでも吸収したいですから、先にノートでもくれれば単語のひとつも調べていくのですが、そうもいきませんので、何とかわかるまで質問するしかありません。 日本のコーナーが設けられていることに驚きました。家具の歴史の中でもずっと後のほう、19世紀中ごろから後半にかけてですが、日本の掛軸や陶器、漆塗りの器などの蒔絵からインスピレーションを受けたイギリスのデザイナーが日本の雰囲気を家具の装飾や絵画やポスターなどに取り入れていることをしりました。特に日本の黒塗りの漆の雰囲気と霞がかった掛軸などの神秘的な雰囲気は非常に強く印象に残ったようで、わざわざ織物の中に横線を強調していれて霞がかった雰囲気を出したり、本物黒漆は無理でもペイントで何とか黒と金のコンビネーションを家具の装飾に取り込んだりしています。 ![]() <日本文化の影響が見られるサイドボード> 17世紀には中国や日本の漆の真似をして、家具の仕上げに取り入れるよう試みていますが、当然コチラの湿度と気温ではうまく塗り重ねることができずその雰囲気を出すために相当苦労してイギリス流の方法を考え出したようです。コチラではその技法をジャパンニングといってます。そうまでして仕上げにバリエーションが欲しい理由というのはなんだったのでしょうか?またなぜそうも漆に見せられてのでしょうか?今後の課題になりました。 自分の国が留学先にそのような強い影響を与えているとなると誇らしい気持ちになります。その反面もっと自分の国のことを勉強しないといけないなと思い始めました。 美術館では古い家具を扱っていますので、とても光を抑えた展示になっています。このような展示用に資料としての家具を扱う人たちをコンザベーターといってます。僕の中では彼らは研究者であり学者であります。ですのでホワイトカラーという感じがします。 彼らはこの後どのような処置をすれば家具が長く生きながらえるかを検討して実行していきます。 ですので美術館のこの暗さは彼らの判断として光を与えずに保護する方針を採らないとこの家具のダメージは進行するとみなしたのでしょう。ほとんど家具の全体像が見えないような場所もありますが、それも家具にとっては必要なことなのです。 ロンドンに来られたら一度見学に行くことをおススメします。寄付を募っていますがタダで入れます。 ![]() <カフェで一休み> 家具は時代によって主に使われる木の種類が異なります。OAK、WALNUT、MAHOGANY、SATINWOODと流行が移り変わります。そして、スタイルもルネッサンス、バロック、ロココ、ネオクラシカル、リバイバル、アートアンドクラフトへと移っていきます。そのような順を追って家具を見られることはやはり素晴らしいことだと思います。 ![]() <ロバート・アダム-デザイン/トーマスチッペンデール作 黄金コンビの椅子> ですが、僕としてはこのような展示されている家具は標本の昆虫と一緒でなんとも寂しい感じを受けます。やはり家具は使われてナンボ。レストアーは使えるように直してナンボ。というきがします。触れない使えない光にも当たれない、何か本末転倒のような気がします。 そのような感想持った後、これまた非常に貴重な体験ですが、美術館のワークショップに行くことができました。今ワークショップでは2010年に向けての展示会の準備に追われておりました。5人のコンザベーターと一人のギルダーが迎えてくれました。それぞれのオブジェクトの説明をしてくれました。16世紀のOAKのチェストや18世紀の朱漆のチェストドロワーなどが直しを待っているようでした。というのは、彼らは自分ひとりでプランをたてて実行するわけではありません。キュレーターが大まかなプランを立てレストアーおよびコンザベーターはそのプランに対して技術的にできることできないことを振り分けていきながら数人がかかわってプランを立てるのだそうです。ですのでプランを組むのに数週間かかりますし、クリーニングだけで数百時間を費やしたりします。非常に歴史的価値の高い家具ですので、慎重にことを運ぶ必要があります。僕達とは注意を払う箇所が違います。基本的にはこれから長く保存するために今必要なことをしていきますし、いろいろな展示会に見せるために必要な仕上げ面に特に注意を払っているのです。僕には到底勤まらない仕事だなと思いました。 今回の見学でアンティーク業界にもさまざまな考え方や世界があることを知りました。人によってアンティークとのかかわり方もいろいろです。以前から気持ちの中にははっきりとあったのでしょうが、しっかりと意識として確認できたのが今回の収穫です。 やはりアンティーク家具は、持ち主にしかわからない家具への熱い思いと、それを組んで何とか直したいと思うレストアラーとの関係が僕にとっては面白いです。使うために強度を保つことと、オリジナルを最大限残すという相反するお題に向かい色んな方法を考えることが楽しいです。僕にとってはまず使える家具が一番価値があります。だからこそ直し甲斐があります。全てが一点もので、全ての作業が一発勝負という緊張感が好きです。よく日本に居るときになんで留学するのとよくきかれたのですが、やっと自分でもなぜこの仕事がやりたいのか少しわかってきた気がします。みんなクラスメートは動機がはっきりしていて羨ましかったのですが、これからは僕も少しましなことが言えそうです。これからも少しずつ自分の心の中にあることが解明できると嬉しいです。 写真は出発前に思い出したようにとったので内容を読むのを忘れました。 ![]() ![]()
by scott_hachisuka
| 2006-03-12 08:24
| 家具
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